FODMAPと過敏性腸症候群(IBS)
FODMAPと過敏性腸症候群(IBS)
食後のお腹の張りやガス、腹痛、下痢、便秘が続き、「食べ物が原因なのでは」と不安に感じていませんか。FODMAPは、一部の過敏性腸症候群(IBS)の方で症状に関係する可能性がある、発酵しやすい糖質の総称です。
低FODMAP食は、特定の食品を一生避ける食事療法ではありません。一定期間の制限と再導入を通じて、自分が反応する食品と、症状が出にくい摂取量を見つけることが目的です。
特定の食事と症状が関連していても、原因がFODMAPとは限りません。乳糖不耐症、炎症性腸疾患、甲状腺疾患、薬剤による影響など、別の原因との鑑別が必要になる場合があります。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、大腸で腸内細菌によって発酵しやすい4つの糖質の頭文字をとった総称です。
これらの糖質は、大腸内で過剰なガスを発生させたり、腸内に水分を引き込んだりする性質があります。健康な方であれば問題ありませんが、腸が敏感になっている方(過敏性腸症候群など)が摂取すると、過剰なガスによる「お腹の張り・痛み」や、水分の増加による「下痢」、あるいは「便秘」を引き起こす大きな原因となります。
FODMAPが小腸で十分に吸収されないと、腸管内へ水分を引き込むことがあります。さらに大腸へ到達すると腸内細菌によって発酵され、水素やメタンなどのガスが発生します。
その結果、次のような症状が起こる場合があります。
FODMAPは「体に悪い食品」という意味ではありません。健康な方では問題にならないことも多く、IBSなどで腸が刺激に敏感になっている方の一部で症状に関係すると考えられています。
過敏性腸症候群(IBS)は、繰り返す腹痛と、下痢や便秘などの便通異常が関連して起こる病気です。
腫瘍や明らかな炎症が見つからなくても、消化管運動、内臓知覚、腸内細菌、ストレス、脳と腸の相互作用である「脳腸相関」などが複合的に関係して症状が起こると考えられています。
| タイプ | 主な特徴 |
|---|---|
| 便秘型IBS(IBS-C) | 硬い便や排便困難が多い |
| 下痢型IBS(IBS-D) | 泥状便・水様便が多い |
| 混合型IBS(IBS-M) | 便秘と下痢を繰り返す |
| 分類不能型IBS、ガス型IBS(IBS-U) | ほかのタイプに明確に分類できない |
お腹の張りやガス、腹痛、下痢などが続く場合、IBS(過敏性腸症候群)だけでなく、SIBO(小腸内細菌増殖症)が関連している場合があります。
SIBOとは、小腸内で細菌が過剰に増殖することで、腹部膨満、ガス、腹痛、下痢などの症状を引き起こす病態です。IBSと似た症状がみられるため、症状だけで両者を区別することは困難です。
FODMAPを減らすことでお腹の張りなどが軽減する場合がありますが、低FODMAP食はSIBOそのものを治療する方法として確立されているわけではありません。症状が長く続く場合や、食事を調整しても改善しない場合には、原因を自己判断せず消化器内科へご相談ください。
一般的に「腸に良い」とされている食品(納豆、ヨーグルト、りんご等)は、実は高FODMAPであり、よかれと思って食べている食品が、かえって症状を悪化させているケースも多々あります。
FODMAPは食品の種類だけでなく、1回に食べる量、熟度、加工方法、商品の原材料によって含有量が変わります。まずは、日本の食卓でよく使う食品の代表例を簡易一覧で確認してみましょう。

※FODMAP量は、1回に食べる量、熟度、加工方法、商品成分によって変わります。「高FODMAP=食べてはいけない食品」という意味ではありません。
※上記の表は一例です。より網羅的な食品一覧表や、食事法の注意点について詳しく知りたい方は、当院監修のコラム記事もあわせてご参照ください。
👉 FODMAP食品一覧と食事法の注意点(当院メディアサイトへ)
米は低FODMAP食の主食として比較的取り入れやすい食品です。白米、玄米、米麺などを利用できます。
ただし、米粉パンなどの商品には、小麦、イヌリン、オリゴ糖、はちみつなどが添加されている場合があります。「米粉」や「グルテンフリー」という表示だけで判断せず、原材料を確認しましょう。
小麦を多く使用した食品では、小麦に含まれるフルクタンが症状に関係する可能性があります。
小麦を食べて症状が出るからといって、必ずしもグルテンが原因とは限りません。FODMAPとグルテンは異なる成分です。
玉ねぎとにんにくは、フルクタンを多く含む代表的な食品です。カレー、スープ、ドレッシング、ソース、ハンバーグなど、外食や加工食品にも見えない形で使用されていることがあります。
牛乳や通常のヨーグルトには、ラクトース(乳糖)が含まれています。乳糖不耐症の方では、摂取後にガス、腹痛、下痢、腹部膨満が起こることがあります。
乳糖除去牛乳や乳糖除去ヨーグルト、ラクトースの少ない硬質チーズなどを利用できる場合があります。
豆腐は種類や製法によってFODMAP量が異なります。水切りされた硬い豆腐では、水溶性のオリゴ糖が抜けるため比較的低FODMAPになります。
一方、水分の多い絹ごし豆腐や豆乳、豆類では、摂取量によってFODMAP量が多くなることがあります。
果物では種類だけでなく、熟度と摂取量が重要です。キウイ、いちご、みかんなどは比較的取り入れやすい一方、りんご、梨、マンゴー、スイカなどは量に注意します。
バナナは熟度と摂取量によってFODMAP量が変化するため、硬めのバナナを適量から試す方法があります。
低FODMAP食は「一生続ける食事法」ではありません。FODMAPの多くは腸内の善玉菌のエサとなるため、長期間の極端な制限はかえって腸内環境(腸内フローラ)を悪化させ、栄養不足を招く危険性があります。
以下の3つのステップで、「自分に合わない食品(トリガー)」を見つけ出すことが本来の目的です。
| 段階 | 目的 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1.制限期 | FODMAPを減らし、症状が改善するか確認 | 2~6週間 |
| 2.再導入期 | 糖質群ごとに戻し、原因と許容量を確認 | 約8~12週間 |
| 3.個別化期 | 症状が出る食品・量だけを調整 | 長期 |
低FODMAP食事療法を頑張っても「お腹の張りがスッキリしない」という方は少なくありません。その場合、原因は食べ物だけではなく、「脳腸相関(のうちょうそうかん)」の乱れにある可能性があります。
脳と腸は自律神経を通じて密接に繋がっており、ストレスが腸の働きを乱し、逆に腸の環境の悪化が脳にストレスを与えるという悪循環が存在します。近年、質の高い乳酸菌(プロバイオティクス)を取り入れて腸内環境を整えることが、この脳腸相関を安定させ、IBSの知覚過敏やガスによる不快感を和らげるというエビデンス(医学的根拠)が多く報告されています。
当院では、医療機関専売の乳酸菌サプリメント「De-glu(デグル)」を取り扱っております。
元々は「パンやパスタがやめられない方のための、グルテン分解サポート」として開発されたものですが、実際の臨床現場では、普段グルテンをあまり食べない方であっても「長引くお腹の張り」が改善するケースを多く経験しています。
これは、De-gluに含まれる生きた乳酸菌が腸内フローラに働きかけ、脳腸相関を通じた不調の改善に寄与しているからではないかと当院では考えています。「食事制限が辛い」「色々と試したがお腹が張る」という方にとって、試してみる価値のある選択肢の一つです。
お腹の張り、腹痛、下痢、便秘が長く続く場合は、消化器内科への受診をご検討ください。症状があるからといって、すべてがIBSやFODMAPによるものとは限りません。自己判断による過度な食事制限を始める前に、必要に応じてほかの消化器疾患がないか確認します。
お腹の張りや下痢、便秘が続く場合、「自分はIBSだ」「FODMAPが合わないんだ」と自己判断して食事制限を始めるのは非常に危険です。
なぜなら、それらの症状の裏には大腸がんや、難病である潰瘍性大腸炎・クローン病といった、命に関わる「器質的疾患(腸の粘膜や構造の異常)」が隠れているケースが少なくないからです。
IBS(過敏性腸症候群)という診断は、大腸カメラ(内視鏡検査)を行って「腸の中にがんや炎症がないこと」を証明して初めて確定します(除外診断)。
当院では、鎮静剤を使用し「ウトウトと眠っている間に苦痛なく終わる大腸カメラ」を行っております。まずは専門医による正確な診断を受け、腸の安全を確認した上で、お薬の治療と適切な食事指導を並行して進めていきましょう。
いいえ、完全に避ける必要はありません。
FODMAPは腸に悪い成分ではなく、腸内でガスを発生しやすい糖質です。体質により耐えられる量が異なるため、ご自身の症状が出やすい特定の食品を中心に控えるのがおすすめです。長期間の完全除去は善玉菌を減らすリスクがあるため推奨されません。
一般的には4〜6週間の「除去期間」で症状の変化を感じる方が多いです。
その後、少しずつ高FODMAP食品を再導入して、自分の腸に合う食品と合わない食品を見極めるステップ(再導入期)に進むことが重要です。短期間での効果を焦らず、体質を見極めていきましょう。
はい、和食は低FODMAPな食材が豊富であり、工夫次第で非常に取り入れやすい食事法です。
白米や十割そばを主食とし、焼き魚、卵焼き、豆腐、みそ汁(玉ねぎやニンニクを入れない)などは代表的な低FODMAP食です。ただし、大豆が多すぎる味噌や、小麦を使った揚げ物の衣などは高FODMAPになるため注意が必要です。
一時的な試みであれば問題ありませんが、長期的な自己判断での制限は栄養不足や腸内環境の悪化を招くリスクがあります。
また、症状の原因がIBSではなく、大腸がんなど別の病気である可能性もあります。まずは消化器内科で大腸カメラ等の検査を受け、医師の診断と指導のもとで安全に進めることが最も確実です。
食事以外の要因(過度なストレス、自律神経の乱れ、腸の運動異常)や、別の消化器疾患が関与している可能性が高いです。
食事療法だけで限界がある場合は、腸の働きを整える最新の内服薬(イリボー等)や漢方薬を組み合わせることで劇的に改善するケースが多くあります。一人で悩まず、一度専門医にご相談ください。
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