
便秘外来
便秘外来
便秘は多くの人が抱える身近な悩みですが、その原因や症状、体質には個人差があります。「数日出ない」「出てもスッキリしない」「薬を飲まないと出ない」といった慢性的な便秘症状がある場合は、単なる食生活の問題ではなく、腸の動きや排便機能、腸内環境の異常が関わっていることもあります。慢性便秘の治療には、食事・生活習慣の改善指導や腸内環境へのアプローチ、薬物療法を含めた総合的な診断と継続的なサポートが必要です。
しかし、こうした対応には十分な診察時間と専門知識が求められ、一般的な外来診療枠では限界があるのが実情です。そこで当院では、専門的な知識と丁寧な時間を要する便秘治療に対応するために、「便秘外来」を専用枠で設けています。
※一般外来でも便秘のお悩みの相談自体は可能です。便秘専門外来は枠数が限られていますが、それぞれの患者様に十分な時間を確保し、より根本的な解決を目指します。長年の便秘にお悩みの場合は、治療にも相応の期間を要するケースが多いです。単発の受診ではなく、回数を重ねる治療が必要であることはご承知おきください。最終的には通院なし、もしくは身体に負担の少ない薬を併用しながらのセルフケアで、排便調整が可能になることを目標としています。
私が医師になり、消化器内科の診療に携わるようになって感じたのは、便秘について本気で診ている先生って、実はあまりいないかもしれない、ということです。というのも、胃がん・大腸がんや潰瘍性大腸炎などの“重い病気”の診療と異なり、慢性便秘や過敏性腸症候群などはありふれた病気であるにも関わらず、体系的に学ぶ機会が少なく、他の医師と症例を議論する場もほとんどありません。そのため、多くの医師が「我流」で便秘診療を行っているのが現状だと感じています。そんな中、なぜ私があえて便秘外来に取り組むのか――それは、私自身が子どもの頃から重度の便秘に悩まされてきたからです。
便秘は軽く見られがちですが、実際に悩んでいる方にとっては、毎日の生活にものすごく影響する、本当に深刻な問題だと思います。私自身、かつては市販のコーラックを常備し、下剤なしでは1週間出ないのが当たり前。排便時には毎回強烈な苦痛があり、トイレに30分以上こもってうずくまるような日々。「快便って何?」「排便=苦痛」という生活が長く続いていました。そんな私が消化器内科医になり、専門的な知識を学んで分かったことは、便秘は「体質だから仕方ない」ものではなく、正しい知識とケアで改善できるということ。実際、私は自分自身の便秘をセルフ・コントロールできるようになり、「便秘がないとこんなに体が軽いのか」「お腹がスッキリすると、毎日が前向きになるんだ」と、驚きながらも快適な日々を送れています。
便秘がなくなると、生活の質が劇的に変わります。「いつもお腹が重たい」「トイレが苦痛」「何をやってもダメだった」――そんな毎日から、朝スッと便意を感じ、短時間でスッキリする快適な日々へ。人生はもっと明るくなります。便秘は、あなたのせいじゃありません。でも、便秘を変えていけるのは“今のあなた”だけです。「便秘ぐらいで病院に行っていいのかな…?」と迷っている方こそ、ぜひ一度ご相談ください。消化器内科医として、そして一人の便秘経験者として、便秘のない日々を手に入れるお手伝いができたら嬉しいです。
「便秘は命に関わらないから放っておいても大丈夫」――そう考えている方は少なくありませんが、実は便秘は健康寿命や命にまで影響を及ぼす可能性があるということが、近年の研究で明らかになっています。海外の大規模研究では、慢性便秘を抱える人は、そうでない人に比べて総死亡率が高いという報告が複数あります。特に、便秘の方は排便で息む際に血圧が急激に上昇しやすく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系の病気による死亡リスクが有意に高まることが指摘されています。さらに、心停止で救急搬送された人の8人に1人はトイレからの搬送であると言う報告もあり、何か異変があった場合でも気づかれにくいことも死亡率の高さにつながっています。
また、便秘と大腸がんの因果関係についてはまだはっきりとした見解はありませんが、東北大学の研究によると、便通回数が1日1回ない場合は直腸がんの発症リスクが高くなり、下剤の使用頻回の使用が結腸がんの発症リスクを上昇させている可能性がある、とされています。
便秘は、食生活・運動習慣・ストレス・自律神経の乱れ・年齢・性別・基礎疾患など様々な原因が複雑に絡み合って起こります。若年層では特に女性に多く見られますが、加齢とともに男性の便秘も増え、高齢では性別による差が少なくなるのが特徴です。以下では、代表的な原因について詳しく解説します。
便秘の原因の中で最も危険なのは「大腸がん」です。大腸がんや大腸ポリープによって大腸の内腔が狭くなることにより、物理的に便の通過が妨げられ、便秘として症状が出ることがあります。特に以下のような症状を伴う便秘は要注意です
このような場合、単なる機能性便秘と自己判断せず、早めの内視鏡検査(大腸カメラ)による確認が非常に重要です。
便秘の原因は腸の中にだけあるわけではありません。糖尿病や甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの神経疾患などの基礎疾患があると、腸の動きは悪くなり便秘になりやすくなります。また風邪をひいた際に処方される咳止めや、高血圧に対する一部の降圧剤、うつ病など心療内科の疾患で処方される薬剤などの副作用として便秘症状が現れる場合もあるため、総合的な管理が必要になります。
健康な便は、70~80%が水分、残りが固形成分(未消化の食物残渣と腸内細菌や古くなった腸の細胞の残骸など)でできています。固形成分の中でも大きな比率を占めるのが食物繊維です。食生活が偏り、食物繊維が不足したり、水分の摂取量が不足したりすることは便秘の原因となります。また、朝食の摂取により、胃結腸反射による大腸の大蠕動が発生し、便意を感じやすくなるため、規則正しい生活リズムを整えることも重要です。
食物繊維の摂取は単独で行うよりも、適度な運動と組み合わせることでより効果を発揮することが分かっています。ウォーキングや体操などの軽い運動でも一定の効果がありますが、腸が上下に揺さぶられるようなジョギングや縄跳びのような動きの方が、より効果的です。また、運動が苦手な方は、腸もみマッサージのように身体の外側から大腸を直接刺激してあげることや、ドローインなど呼吸法により腸を動かす練習をすることも、簡単にできる腸刺激法として有効です。
腸の動きは自律神経のバランスに大きく影響されます。副交感神経が優位なとき(リラックス時)には蠕動運動が活発になりますが、ストレスや過度な緊張状態では交感神経が優位となり、腸の動きは止まりがちになります。また、便意を我慢し続ける習慣があると、直腸の感覚が鈍くなり、便意そのものを感じにくくなることもあります。便意を感じたら我慢せずトイレに行く、1日1回は排便の「チャンス時間」を作るなど、排便のリズムを取り戻す生活習慣の見直しも大切です。
便秘の治療では、まず原因とタイプを正確に見極めることが大切です。問診だけでなく、必要に応じて検査を行い、「病気によるものか」「腸の動きの問題か」を明らかにすることで、効果的な対策が可能になります。
便秘外来では以下のような検査・診察を行います。
検査・診察 | 概要 |
---|---|
問診・診察 | 排便の頻度や便の状態、生活習慣、薬の使用歴などを詳しく伺い、便秘のタイプ(機能性or器質性、大腸通過正常型or遅延型or排便障害型)を判断します。 |
大腸内視鏡検査 | 大腸がんやポリープ、炎症などの器質的疾患がないかを直接確認します。 |
腹部エコー | 腸の動きやガス・便の状態を画像で確認します。 |
腸内細菌叢検査 (自費診療) |
便秘の背景にある腸内環境の乱れを「見える化」。当院では2種の検査キットをご用意しています。 |
必要に応じて専門施設紹介 | 排便造影や通過時間測定などの特殊検査が必要な場合、対応施設をご紹介します。 |
便秘治療のゴールは、単に「毎日出るようになること」や「薬を一切使わないこと」ではありません。本当に目指すべきゴールは、自分にとって無理のない、快適で安定した排便リズムを見つけていくことです。便秘のタイプや体質は人それぞれ異なり、全員に同じ治療が合うわけではありません。だからこそ当院では、「薬を使う=悪」とするのではなく、「薬を必要に応じて上手に使えるようになること」を大切にしています。
例えば、腸の動きが弱い「大腸通過遅延型」の方は、生活習慣の改善だけで完全に薬から離れることが難しいケースもあります。そのような場合でも、薬を適切に使いながら、自分に合った量・タイミング・種類を見極められるようになることが大きな前進です。当院では、刺激性下剤(アントラキノン系、センノシドなど)の常用は原則おすすめしていません。その代わり、腸の動きを穏やかに整える薬や、便の水分バランスを整える薬を中心に、患者さん自身が「どの薬を、どんなときに、どのくらい使うか」を理解し、自己調整できるようになることを目指します。
便秘外来のゴールは、「薬をゼロにすること」ではなく
つまり、「便秘を自分でコントロールできる状態」を手に入れることこそが、本当のゴールです。
とはいえ「できるだけ薬を使わずに治したい」「自然なかたちで便通を整えたい」そんな想いをお持ちの方は、とても多いです。薬を使わない方法を目指すには、その前に大切なことがあります。それは腸内環境を「見える化」することです。「食物繊維を摂ってるのに改善しない」「整腸剤を飲んでも変わらない」―― こうしたケースでは、腸内環境のバランスが崩れていることが根本の原因になっていることがあります。当院では現在、以下の2種類の腸内フローラ検査キットをご用意しています
検査キット名 | 特徴 | こんな方におすすめ |
---|---|---|
MicroBio Me 44,000円 |
日本で最も詳細な腸内細菌検査+自分に合った食物繊維サプリが購入可能 | 食事スタイルを大きく変えずに腸活したい方 |
Mykinso Pro GutV4 22,000円 |
お手軽かつ全体的な腸内バランスを知ることができる | 生活改善も含めて自分と向き合いたい方、初めて腸内検査を受ける方 |
腸内の菌バランスや多様性を可視化し、自分にとって今どんな対策が必要かが明確になることで、「何をすればいいのか分からない=腸活迷子」状態から抜け出すことができます。検査を受けることで、自分に合わない食事やサプリを続けていたことに気づく方も少なくありません。たった一度の検査で、自分の体質に合ったアプローチがわかれば、「薬を使わずに改善できる可能性」も現実的になります。「薬に頼りたくない」――その気持ちを大切にするためにも、まずは自分の腸を正しく知ることからはじめてみませんか?
便秘治療に用いられる薬のうち、頻用される薬は大きく分けると次のように分類されます。状態に応じてこれらを単独、もしくは組み合わせて処方します。
大腸の筋肉を動かす神経を直接刺激して、腸の蠕動を促すことによって溜まった便をリセットする薬です。内服から8〜12時間程度で作用し、スッキリ感が強いメリットがある一方、薬剤耐性や精神的依存性があり、長期連用には向かない薬です。
市販の下剤の80%には刺激性下剤の成分が含まれています。刺激性下剤の特徴です。腸の神経を刺激して無理やり動かすので、スッキリ感を得やすい反面、使い続けると薬剤耐性によって同量の下剤では効果が得られなくなってしまうことや、精神的依存性が形成され、クセになってしまう場合があります。刺激性下剤はお腹が張ってツラい時に、週2回以内を目安に「腸をリセット」する目的で使用するに留め、他の毎日連用しても身体に害のない薬剤へとシフトしていくことが重要です。
初めて便秘治療を受ける方の多くが、「下剤はクセになるのでは?」「できれば飲みたくない」といった不安を抱えています。そのような方にまずご提案するのが、“非刺激性”の浸透圧性下剤です。
浸透圧性下剤は、腸の中に水分を引き込むことで便を柔らかくし、出しやすくするお薬です。刺激で無理やり動かすのではないため、習慣性がなく、長期的にも安全に使いやすいのが特徴です。主な種類は以下の通りです。
モビコール®は水に溶かして服用する粉タイプの薬です。「便秘の人はたくさん水を飲んだほうがいい」という事は多くの方が聞いたことがあると思いますが、実際は飲んだ水の80%以上は大腸に到達する前に小腸で吸収されてしまいます。一方で、モビコール®を溶かした水は、ほとんどが吸収されずに直接大腸に到達し、便を柔らかくし、大腸の蠕動運動を活発化させることによって自然な排便を促します。
2歳から使用可能な安全性の高い薬で、世界で最も使用されている下剤です。他の薬との飲み合わせも気にしなくて良いことが大きなメリットです。一方で、刺激成分が含まれていない「やさしい下剤」なので、効果が出るまでに2〜5日かかる場合もありますから、「飲んでもすぐ効かない…」と感じても、すぐに止めずに継続することが大切です。唯一の難点は、味が「飲みにくい」「まずい」と感じる方が多いことです。ジュースやチョコ系ドリンクなど味のついたものに混ぜて飲むと比較的飲みやすくなるため、続けやすい方法をご自身で工夫することも大切です。
症状が比較的軽い方や、モビコールが苦手な方には、酸化マグネシウムもよく使われます。市販で買える非刺激性下剤としても広く流通しており、コストも低いことより続けやすいのがメリットです。初回は3〜4錠(330mg錠)程度から開始し、便が硬かったら増量、薬が効きすぎて下痢になったら減量するなど、ご自身で量を調節しながら継続的に使用します。5錠(1650mg/日)を超える高用量を継続的に使用する場合がある場合は、高マグネシウム血症のリスクが高くなるため、モビコールやその他の下剤などにシフトする必要があります。
毎食後に分けて内服する方法もありますが、当院では、飲み忘れが少なく、朝の排便時間をコントロールしやすい「就寝前の1回投与」を推奨しています。内服から効果発現まで約8〜12時間程度が目安です。
糖類下剤は、腸内で吸収されにくい糖分を利用して、大腸に水分を引き込むことで便を柔らかくし、排便を促す薬です。糖類下剤は、小腸ではほとんど吸収されず、そのまま大腸まで届きます。大腸に到達すると、腸内細菌によって発酵され、乳酸や酢酸などの有機酸を産生します。腸内環境を整える効果がある(善玉菌が好む酸性環境をつくる)珍しいタプの下剤で、甘味があるため、お子さんや味に敏感な方でも比較的飲みやすいのが特徴です。デメリットとしては、腸内細菌の発酵によってガスが生じやすく、「お腹が張る」「音が鳴る」などの不快感が出ることがあります(腹部膨満感・ガスが溜まりやすい)。
腸の上皮細胞に作用し、水分分泌を促すことで便を柔らかくし、排便を促進する新しいタイプの便秘薬です。
アミティーザは、小腸の粘膜にある「水の蛇口」をやさしくひねってくれるようなお薬です。腸内に水分を引き込み、便をやわらかくして自然な排便を促します。併用禁忌がないため、複数の薬を服用中の中高年の方には使いやすいお薬です。12μg製剤と24μg製剤とがあり微調整がしやすいのもポイントです。一方で、若年者では特に飲み始めの期間に吐き気や腹部膨満感の副作用が多いこと(※高齢者では出にくい傾向)や、妊娠中・妊娠の可能性がある女性には使用禁忌となっています。
アミティーザと同じく「水の蛇口」をひねるタイプですが、こちらは“ドバーッ”と水を出すイメージで排便後のスッキリ感が強いタイプです。元々は「便秘型過敏性腸症候群」用の薬で、腹部不快感の軽減にも一定の効果があります。一方で、微調整が効かず、効果が強すぎる場合は重度の下痢の副作用を引き起こす場合もあります。
グーフィスは、胆汁酸の再吸収をブロックして大腸に流入させ、腸の動きを刺激する薬です。私たちが食事をすると、肝臓から「胆汁(たんじゅう)」という消化液が分泌されます。この胆汁は脂肪を消化するだけでなく、腸を刺激して「大蠕動」という強い動きを引き起こす力を持っています。普段はこの胆汁は95%以上が小腸の一部(回腸末端部)で再吸収されてリサイクルされてしまうため、大腸まではあまり届きません。グーフィスは、小腸での胆汁の再吸収をブロックし、胆汁の刺激で大腸の蠕動運動を活性化させるとともに、大腸内の水分量を増加させ、便秘改善に働きます。
つまりグーフィスは、“体に元々備わっている仕組み”をうまく活用して自然な排便力を引き出します。自然な腸の動きに近い作用のため、習慣性がなく、長く使っても安心です。ただし、胆汁の分泌量は食事に依存するため、食事量にムラがある人や脂質を控えている人(ダイエット中など)は効果が出にくいこともあります。また、若年者では強い腹痛の副作用が生じる場合があります。
正確には下剤ではありませんが、便秘薬として使用される場合があります。ポリフル®は便秘だけでなく下痢にも使えるという、ちょっとユニークな性質を持っています。具体的には便が硬いときは水分を吸ってふくらみ、便をやわらかくし、反対に便がゆるいときには水分を吸着して、便を適度な硬さにします。つまり、腸内の水分バランスを調節してくれる薬なのです。特に、一般的な便秘薬は主に便を柔らかくしながら排便を促すものが主体ですが、便の硬さはさほどないけれども便秘症状を伴う場合や、腹部症状を伴う、便秘型過敏性腸症候群に適応のある薬です。
水分を吸して膨らみ、腸を刺激して自然な排便を促すタイプの下剤です。食物繊維と似た作用による排便促進効果です。処方薬としてはバルコーゼ®がありますが、モコモコと口の中で膨らみ、非常に飲みづらいため、一般的に処方されることは少ないでしょう。代わりに、水溶性食物繊維の一種であるグアーガム分解物を用いることが一般的で、便通異常症診療ガイドラインにおいてもその有用性が言及されています。当院でも医療機関で最も取り扱いの多いグアーガム分解物としてサンファイバープラス®を取り扱っております。
腸内環境を整えることで排便リズムをサポートする働きがあります。いわゆる下剤とは異なり、「腸内の環境改善」を通して、間接的に便通を整える治療の補助的な役割を期待して用いられることが多いです。代表製品としてはビオフェルミン、ラックビー、ミヤBMなどが挙げられます。
モサプリドクエン酸塩は、本来は消化管運動促進薬(消化管機能調整薬)として開発された薬で、上部消化管(胃や小腸)を中心に作用します。大腸への直接的な作用は弱いものの、全体の消化管通過を改善することで排便に良い影響を与えることがあることが知られており、臨床現場では慢性便秘に対する補助的な効果を期待して処方されることがあります。単独では慢性便秘に対しては効果不十分なことが多く、腸全体の動きを底上げする「ベース強化剤」のような位置づけで、他の下剤や整腸剤と併用します。
便秘治療薬には作用機序や効果の強さ、副作用のリスクなどに違いがあり、患者さん一人ひとりの便秘のタイプやライフスタイル、体質に合わせて、最適な薬を選び、必要に応じて組み合わせながら調整していくことが大切です。
慢性便秘の治療で大切なのは、ご自身の便秘のタイプに応じて、薬を正しく・上手に使いこなしながら、生活習慣の見直しや腸内環境の改善もあわせて行うことです。その実現のためには便秘治療の「5つの柱」を意識した取り組みが必要です。
便秘解消には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂取することが重要です。不溶性食物繊維は便のカサを増やし、水溶性食物繊維は便に潤いを与えて排便を促します。両方をバランスよく含む食品としてはバナナやキウイフルーツが代表的です。
また、キウイフルーツは食物繊維の他に、アクチニジンと呼ばれる酵素によっても消化や胃腸の動きを促して便秘を改善する効果と、腹痛を減少させる効果が知られています。一方で、食物繊維の摂りすぎが、お腹の張りをかえって悪化させる場合もあるため、注意が必要です。
他にはオリーブオイルやナッツ類などの良質な油脂を摂取することも有効です。便の滑りが良くなり、便通が改善します。ナッツは塩分を含まない、素焼きのものを選びましょう。また油脂はカロリーが高いので過剰摂取には注意しましょう。
起床後や就寝前に白湯を飲むことをお勧めしています。胃腸を温め、水分を補給してあげることでスムーズな排便を促します。日中もこまめな水分摂取を心がけましょう。
便秘になると、おならの回数が増え、臭いもキツくなる場合があります。これは腸内に悪玉菌が増えることが原因です。他にも卵や肉など、動物性のタンパク質の過剰摂取はおならの原因となります。
ヨーグルトには善玉菌が多く含まれているため、一般的には便秘に良い影響を与えます。ただし、ヨーグルトは善玉菌以外にも乳成分を多く含むため、乳製品が合わない方は摂取を控えましょう。
野菜をたくさん食べることは、腸は動いているのに食物繊維の摂取量が不足しているタイプの便秘には有効ですが、腸の動きが悪い場合には逆効果になる場合があります。食物繊維を摂るとお腹が張る、という方は腸の動きが悪い可能性があるので、一度受診してご相談ください。
便秘の改善には1日約2リットル程度の水分摂取が理想的です。1回にガブガブ飲むのではなく、1〜2時間にコップ1杯程度の水分を小分けにして摂るのが良いでしょう。
カフェインを含む飲料は利尿作用があるため、脱水になるという説を唱える人がいますが、実際には飲んだ水分が全て出るわけではないので、脱水になることはありません。ただし、カフェインの過剰摂取とならないよう、コーヒーなら1日4杯程度までを目安にお召し上がりください。
朝は大腸が一番動く時間帯です。便意がなくても、トイレに行きとりあえずいきんでみる習慣をつけることで、便意を感じる力がついてきます。ただし、いきんでみてもでない場合は長時間粘ると逆効果ですので、諦めて撤退しましょう。朝忙しくてトイレに行けないという方は1時間〜30分程度、起床時間を早めて、ゆっくりとした朝を過ごする習慣をつけるのも有効です。
市販の下剤の80%には刺激性下剤の成分が含まれています。一時的な使用であれば問題ありませんが、長期的に使う場合は酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムといった浸透圧性下剤を選ぶようにしましょう。それでも改善しない場合は自己判断せず、一度専門外来の受診をお勧めします。
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