吐き気がする
吐き気がする
吐き気は日常的にありふれた症状ですが、その原因は様々です。脳には「嘔吐中枢」があり、これが刺激されることで吐き気が生じます。この嘔吐中枢を刺激する経路として、内臓などを走る末梢神経を経由する末梢性の経路と、ストレスや脳への直接的な障害による中枢性の経路とに分けられます。
消化器内科で扱うのは主に内臓が悪いことによって起こる末梢性の吐き気ですが、機能性ディスペプシアなどの場合は、ストレスや抑うつ状態など中枢性の要因も混在する場合があり、適切な診断をつけた上で治療法を選択します。
食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化器がんは、初期の段階では特有の症状はありませんが、進行して食べ物の通り道が詰まってしまうと吐き気の原因になります。消化管は口から肛門に至るまで1本の長いホースのようになっていますが、どこかでぎゅっと握りつぶされると、下に落ちていけなくなった水が上流に逆流してくるようなイメージです。
吐き気の症状が長期化する場合や、食欲の低下や体重減少、貧血、黒色便、血便などを伴う場合は、早急に胃カメラ・大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
胃酸の逆流による前胸部の不快感が、吐き気として感じられる場合もあります。特に夜間〜明け方にかけて症状が強い場合や、胸焼け、呑酸症状を伴う場合は逆流性食道炎を疑います。
また、胃酸逆流が慢性化すると、細胞の変化を引き起こし、バレット食道と呼ばれる状態に変化することがあります。バレット食道は、がん化のリスクがありますので、定期的な経過観察が必要です。
口から細菌やウイルスが消化管内に入り込み、胃や腸の粘膜が傷害されたり、毒素によって嘔吐中枢が刺激されたりすると吐き気を催します。特に吐き気が強いものとして有名なのは、牡蠣を食べた後のノロウイルス感染ですが、それ以外にも、おにぎりなど直接手で触れたものから感染する黄色ブドウ球菌や、生焼けの鶏肉などを介したカンピロバクターなど、種類は実に様々です。吐き気以外に、下痢や発熱などの胃腸炎症状を伴う場合もあります。
胃アニサキス症は、アニサキスに寄生されたサバ、サンマ、アジ、イカ、サケ、カツオなどの新鮮な魚介類を生で食した後に発症します。食後数時間以内、遅くとも24時間以内に激しい腹痛と吐き気で発症し、胃カメラによってアニサキス虫体を摘除することにより、症状は比較的速やかに改善します。
ピロリ菌は一度感染すると、除菌治療が行われるまで持続感染を起こし、慢性胃炎による胃もたれや吐き気などの症状を引き起こす場合があります。通常は遅くとも5歳くらいまでの幼少期に感染しますが、大人になってから感染した場合、持続感染は稀であるもののAGML(急性胃粘膜病変)を引き起こし、激しい腹痛や吐き気、吐血、下血といった症状を呈する場合があります。
ピロリ菌感染や、ストレス、薬剤の影響により胃や十二指腸に潰瘍ができると、腹痛や胃のむかつき、吐き気などの症状を起こす場合があります。悪化すると出血による貧血症状や、穿孔といって胃や腸に穴があく場合があり、注意が必要です。
検査で目に見える異常がないにも関わらず上腹部の不調をきたす病気で、食後のもたれ感や、すぐにお腹がいっぱいになる、吐き気、胸焼けなど様々な症状を引き起こします。腹部の症状を訴える患者様で一番頻度の多い疾患です。
好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎の総称で、厚生労働省が指定難病として定める疾患の1つです。食道や胃腸にアレルギー性の炎症を起こし、腹痛や吐き気などの原因となります。食物由来のアレルギーの場合もありますが、原因となるアレルゲンがはっきりしない場合も多く、難治の場合は長期の薬物治療が必要となります。
吐き気の症状がある場合は、いつから始まった症状なのか(急性の症状なのか慢性的に続いている症状なのか)、どのような条件で悪化するか、実際の嘔吐の有無、嘔吐がある場合はその性状、吐き気以外の症状の有無、原因となる食事の摂取歴の有無、海外渡航歴の有無、妊娠の可能性の有無など、まずは問診により得られた情報を整理することにより、考えられる疾患を絞り込みます。その上で、必要に応じて血液検査や胃カメラ・大腸カメラなどによる精密検査を加え、最終的に確定診断をつけます。
原因疾患が特定されたら、その治療を行いつつ、吐き気を抑える対症療法を行うのが一般的です。吐き気の対症療法としてはドパミン受容体拮抗薬もしくはオピアト作動薬が多く用いられます。
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