好酸球性食道炎
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)は、本来は好酸球がほとんどいないはずの食道の粘膜に、好酸球という白血球が集まり、慢性的な炎症を起こす病気です。主に食べ物や環境中のアレルゲンに対する免疫反応が関与すると考えられています。
好酸球はアレルギー反応や寄生虫感染のときに増える細胞で、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などを合併している方に好酸球性食道炎がみつかることも少なくありません。
「好酸球性消化管疾患」は、好酸球が消化管の粘膜に集まる病気の総称です。そのうち、炎症が食道のみに限局しているものを「好酸球性食道炎」、胃や小腸・大腸まで広がっているものを「好酸球性胃腸炎」と呼びます。両者は似た名前ですが、炎症の場所や症状、治療戦略が異なります。
好酸球性食道炎は、以前は「非常にまれ」と考えられていましたが、胃カメラの普及に伴い、近年は日本でも患者さんが増えていることが報告されています。特徴としては以下が挙げられます。
日本では、好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎は厚生労働省が定める「指定難病」として制度上も位置づけられています。
この病気の中心は食べ物や飲み物がスムーズに食道を通らない感覚です。
成人では、次のような症状がみられます。
症状は波があり、「調子がよい時はほぼ気にならない」という方も多くいます。
小児では、年齢によって症状の出方が少し異なります。
「好き嫌い」や「食べるのが遅い性格」と見過ごされることもあり、注意が必要です。
好酸球性食道炎は、自然に完全に治ることは少なく、慢性に経過しやすい病気とされています。治療を中断すると再発することも多いと報告されています。放置すると以下のリスクがあります。
そのため、「時々つかえるだけだから」と様子を見続けるのではなく、早めに「好酸球性食道炎 検査」ができる消化器内科・内視鏡クリニックでの評価が大切です。
好酸球性食道炎かも?と思ったら成人の方であれば、消化器内科・内視鏡内科が適切な診療科です。小児では年齢や症状に応じて、小児科・小児消化器科が担当します。日本橋・人形町・神田エリアで「食べ物がつかえる」「逆流性食道炎の薬を飲んでも良くならない」といった場合は、当クリニックへの受診を検討してください。
まずは医師が丁寧に問診を行い、以下の点を確認します。
多くの場合、問診だけで好酸球性食道炎を確定することはできないため、内視鏡検査などへ進みます。
血液検査では、好酸球数・総IgE値・その他の炎症マーカーなどを確認します。好酸球が増えていることが診断のヒントになる場合もありますが、血液検査だけで診断を確定することはできません。必要に応じて、アレルギー専門医と連携し、特定の食物アレルゲンの検査を行うこともあります。
好酸球性食道炎の確定診断には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)での観察と生検(組織検査)が必須です。内視鏡では、次のような特徴的な所見がみられることがあります。
ただし、内視鏡の見た目がほぼ正常に見える場合もあるため、症状や背景から好酸球性食道炎が疑われる場合には、意識的に複数か所から生検を行うことが重要です。病理検査では、顕微鏡で食道粘膜を観察し、高倍率1視野あたり15個以上の好酸球浸潤が診断の一つの目安とされています。
症状や内視鏡所見に応じて、以下の検査が行われることもあります。
これらは、胃食道逆流症や食道アカラシアなど、他の食道疾患との鑑別に役立ちます。特殊な検査のため、必要時には対応可能な高次医療機関をご紹介します。
好酸球性食道炎の症状は、他の食道・胃の病気と重なる部分が多く、鑑別診断が非常に重要です。
胸やけやつかえ感があると、まず疑われるのが胃食道逆流症(逆流性食道炎)です。しかし、下記のような場合には、好酸球性食道炎を考える必要があります。
食道がんや、食道の筋肉の動きが悪くなる食道アカラシアも、「飲み込みにくい」「食べ物がつかえる」といった症状を起こします。特に中高年で体重減少が目立つ場合は、がんなどをまず除外する必要があります。内視鏡やCTなどを組み合わせて、構造的な狭窄や腫瘍がないかを慎重に確認します。
検査で明らかな器質的異常や炎症が見つからなくても、ストレスなどに関連した「咽喉頭異常感症」「心因性の違和感」「機能性嚥下障害」と診断されることがあります。好酸球性食道炎は見た目が軽微でも、組織検査で診断されることがあるため、「異常なし」と言われたが症状が続く場合には、専門医のもとで再評価されることもあります。
好酸球性食道炎の治療の目的は、
です。治療は、薬物療法・食事療法・内視鏡治療を組み合わせ、患者さんごとの背景(年齢、アレルギーの有無、症状の強さ)に応じて選択します。
現在、日本では好酸球性食道炎(EoE)を適応として保険承認されている専用の薬剤はありません。そのため、ガイドラインやこれまでの研究結果にもとづき、既存の薬剤を組み合わせて治療を行うのが一般的です。主に次のような薬剤が用いられます。
PPIは胃酸の分泌を強力に抑える薬で、「逆流性食道炎の治療薬」として広く使われています。好酸球性食道炎でも、PPI内服により症状や内視鏡所見、組織の炎症が改善する例が多く、現在は第一選択として使用されるべき薬剤と位置づけられています。
PPIだけで十分な改善が得られない場合には、局所作用ステロイド(嚥下ステロイド)が選択肢となることがあります。これは、ステロイド薬を飲み込んで食道の粘膜にとどまるように工夫した使用方法で、全身に広く回るステロイドよりも副作用を抑えつつ、食道の炎症を集中的に鎮めることを目的としています。海外では有効性が示されており、日本でも今後の適応拡大や製剤の開発が期待される分野ですが、現段階では保険適用や使用方法に制限があるため、最新の情報を確認しながら慎重に判断する必要があります。
この疾患が注目され始めた初期にはよく用いられていました。全身ステロイドは炎症を短期間で強力に抑えることができ、多くの症例で症状改善がみられることが報告されています。しかし、その後の研究で、減量(漸減)していく過程で急速に再燃・再発しやすいこと、糖尿病・高血圧・骨粗しょう症・感染症リスクの上昇など、全身的な副作用が無視できないことが明らかになってきました。現在は、どうしても必要な場合の短期間使用にとどめるべきとされており、日常診療では慎重な適応判断が求められます。
喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・食物アレルギーなど、背景にあるアレルギー疾患のコントロールを目的として用いられることがあります。全身のアレルギー反応を落ち着かせることで、間接的に好酸球性食道炎のコントロールに寄与する可能性はありますが、抗アレルギー薬だけで好酸球性食道炎そのものが十分に改善するとは限らず、あくまで補助的な位置づけの治療と考えられています。
海外では、生物学的製剤が、難治性の好酸球性食道炎に対して有効であったとする報告が増えてきました。日本でも、喘息やアトピー性皮膚炎向けの生物学的製剤が普及しており、一部では好酸球性消化管疾患への応用が検討されていますが、EoEに対する保険適用は現時点では認められていません。今後の承認状況やエビデンスの蓄積により、将来的に治療の選択肢が広がる可能性があります。
このように、好酸球性食道炎の薬物療法は、「PPIを第一選択とし、症状・内視鏡所見・組織検査の経過を見ながら、局所ステロイドや食事療法などを適切に組み合わせる」ことが基本となります。全身ステロイドは、効果は期待できる一方で再燃・再発と副作用のリスクが大きいため、必要最小限にとどめることが推奨されます。どの治療をどの程度続けるかは、患者さんの年齢、症状の強さ、生活背景、合併するアレルギー疾患などを総合的に考慮しながら、個別に判断していきます。
好酸球性食道炎は、食物アレルギーとの関連が強いことから、除去食療法も有効とされています。代表的な方法には、
などがあります。
食道狭窄が高度で、薬物療法だけでは食事摂取が難しい場合には、内視鏡を用いた食道拡張術を行うことがあります。バルーンやブジーを用いて徐々に狭い部分を広げ、食べ物の通り道を確保します。拡張術は狭窄そのものに対する治療であり、炎症のコントロールのためには、同時に薬物療法などの全体的な管理が必要です。
好酸球性食道炎は、治療で症状や検査所見が改善しても、治療をやめると再発しやすい病気です。そのため、「症状が楽になった=完全に治った」と考えず、医師と相談しながら、適切な維持療法と定期フォローを続けることが大切です。
一般的なポイントとして、次のような点に注意すると、症状の悪化予防に役立つ場合があります。
喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・食物アレルギーなどをお持ちの方は、好酸球性食道炎と関連していることがあります。
全身のアレルギー疾患をトータルで管理することが、長期的な安定につながります。
症状が落ち着いていても、内視鏡・組織検査での評価が必要になることがあります。ガイドラインでは、症状だけでなく、内視鏡所見・病理所見を組み合わせて経過を評価することが推奨されています。
などのタイミングで、医師と相談しながらフォローアップ計画を立てていきます。
当院は、東京都中央区日本橋人形町にある消化器内科・内視鏡専門クリニックです。日本橋・人形町・神田エリアで「食べ物がつかえる」「飲み込みにくい」といった症状が続く場合は、好酸球性食道炎を含めた食道の病気が隠れていないか、内視鏡検査(胃カメラ)で確認することが大切です。
好酸球性食道炎が疑われる場合、当院での検査・診断の流れは次のようになります。
当院では、鎮静下での胃カメラにも対応しており、「検査がこわい」「嘔吐反射が強い」という方にもできるだけ負担の少ない形で検査を受けていただけるよう配慮しています。胃カメラ検査の流れや鎮静の方法、検査時間や注意点などの詳細については、当院の「胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査」のページもあわせてご覧ください。
好酸球性食道炎とは、食道の粘膜に好酸球という白血球が集まって慢性的な炎症を起こし、「食べ物がつかえる・飲み込みにくい」症状が出る病気です。アレルギー体質の方に多く、放置すると食道が狭くなることがあります。
好酸球性食道炎の主な症状は、固形物を飲み込むときの「つかえ感」や「飲み込みにくさ」です。胸の奥の痛み、食事中の嘔吐、食事が遅くなる、体重減少などがみられることもあり、長く続く場合は検査が必要です。
好酸球性食道炎が疑われる場合、成人は消化器内科・内視鏡内科、小児は小児科や小児消化器科を受診します。日本橋・人形町・神田エリアでは、胃カメラ検査が可能な当院のような内視鏡専門クリニックが適しています。
好酸球性食道炎の診断には、胃カメラ(上部消化管内視鏡)で食道粘膜を観察し、生検(組織検査)で好酸球の集まりを確認することが必須です。血液検査やアレルギー検査は補助的で、これだけでは確定診断できません。
好酸球性食道炎は、レントゲンやCT検査だけでは診断できません。確定には胃カメラと生検が必要です。
好酸球性食道炎そのものが直接がんになるという明らかな証拠はありません。ただし、炎症が続くと食道狭窄や瘢痕が進行し、食事がとりにくくなるなど生活の質が下がります。がん予防というより、日常生活を守るために治療が重要です。
好酸球性食道炎は、薬物療法や食事療法で症状と炎症をコントロールできますが、治療を中止すると再燃・再発しやすい慢性疾患です。症状の改善だけで自己中断せず、医師と相談しながら維持療法と定期フォローを続けることが大切です。
好酸球性食道炎の治療は、まずPPI(胃酸を抑える薬)を第一選択とし、必要に応じて局所作用ステロイド、食事療法、内視鏡的拡張術などを組み合わせます。全身ステロイドは再発や副作用が問題となるため、短期間に限定して慎重に使われます。
好酸球性食道炎では、よく噛んでゆっくり食べ、一口を小さくすることが基本です。つかえやすい食材は工夫して摂り、自己判断で多くの食品を除去しすぎないことが大切です。具体的な除去食は、医師や栄養士と相談して決めます。
「食べ物が胸でつかえる」「水で流し込まないと食べづらい」「逆流性食道炎の薬で良くならない」「痩せてきた」といった状態が続くときは、早めに消化器内科を受診してください。食道がんや食道アカラシアとの区別のためにも、胃カメラ検査が有効です。
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