大腸憩室
大腸憩室
大腸憩室は、大腸の壁の一部が小さな袋状に突出したものです。右側結腸とS状結腸にできやすい傾向にあります。一般的には無症状で、問題になることはありませんが、炎症や出血を起こした場合には「憩室炎」や「憩室出血」と診断され治療が必要です。
憩室そのものによる特有の症状はありませんが、以下のような場合に症状を自覚します。
憩室の中に便塊などがはまり込んで炎症を起こすと、腹痛や発熱などの症状を起こす場合があり、これを「憩室炎」と呼びます。炎症が悪化すると、腸に穴があく「穿孔」を起こす場合があり、腸液が腹腔内に漏れ出ることによる腹膜炎や膿瘍形成をきたす場合があります。
憩室内に露出した血管が破けることによって起こる出血を「憩室出血」と呼びます。腹痛などを伴わずに突然真っ赤な血便が出るので、驚いて受診される方が多いです。
大腸憩室は、一般に年齢とともに増加する傾向にあります。これは加齢に伴い、大腸壁が弱くなることが原因で、70歳以上になると約65%の人に憩室が見つかると言われています。
その他、硬い便を出す時にいきむ習慣があったり、重いものを持ち上げたりした時に、壁圧が繰り返しかかることも要因と考えられます。また、若くても憩室が多発している方も稀にいらっしゃいますが、遺伝的な要素の関与も考えられます。
憩室は症状を起こさない限りは治療の対象とはなりません。「憩室炎」や「憩室出血」を起こした場合は以下のような治療を行います。
軽症の憩室炎であれば、外来通院で抗生物質の内服治療を行います。炎症の程度が強い場合は、合わせて腸管安静を確保するため、入院の上で絶食管理とする場合もあります。炎症をこじらせて「穿孔」を起こし、腹膜炎や膿瘍形成をきたした場合には外科手術が必要になる場合もあります。
ほとんどの憩室出血は自然に止血されますが、出血が持続する場合は止血処置が必要となります。止血方法としては、大腸カメラを用いた内視鏡的止血が第一選択ですが、止血困難な場合は血管カテーテルなどを用いた止血を行う場合もあります。30%程度の確率で再発し、頻回な出血を繰り返す場合は、憩室ごと外科的に腸を切除する手術を行う場合もあります。
大腸憩室の予防には、過度な腹圧を避けることが重要です。便秘がある場合は便秘の治療や、重いものを持つ習慣を避けましょう。
炎症や出血がある場合はもちろん飲酒は控えた方が良いですが、無症状の際には特に飲酒の制限はありません。ただし、一般的な健康を考えると過度な飲酒は当然控えるべきで、1日1合までを目安に週2日程度の休肝日を設けることをお勧めしています。
チョコレートで憩室が悪化するという事実はありません。昔から、「チョコレートを食べると鼻血が出る」なんて言葉をよく耳にしますが、これ自体にも医学的な根拠はなく、憩室出血を助長することもありません。ただしチョコレートはカロリーが高く糖質や脂質も多く含むため、健康を害さない範囲で食べるようにしましょう。
憩室が年齢とともに増加することに加え、高齢になると高血圧や脂質異常症などの基礎疾患を持つ方の割合が増え、血管が弱くなっているため、出血を起こしやすくなります。また、心疾患などによって抗血栓薬を飲んでいる方や、腰痛などで痛み止め(NSAIDs)を内服していることも出血を助長する因子となります。
軽度の出血であれば外来で経過を見ることが可能です。ただし、出血量が多い場合や貧血症状を伴う場合は、入院が必要になるケースもあります。
憩室出血は再発率が高く、約30%程度です。初回の出血から数年たってから再発するようなケースもあれば、毎月のように頻回な出血を繰り返す場合も稀にあります。
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