胃ポリープ
胃ポリープ
胃ポリープは、胃の粘膜の表面にできる突起物の総称です。大腸ポリープの多くは放置すると次第に成長し、将来的に悪性化(がんに変化)するリスクをもった、前がん病変と呼ばれるポリープに相当しますが、胃ポリープは基本的に放置してもがん化しない、良性のポリープであることがほとんどです。
過形成性ポリープは、胃ポリープの中で最も頻度の高いポリープとされ、多くの場合はピロリ菌感染に関連して発生します。「腐ったイチゴ」のよう、とも表現される赤みの強いポリープで、大きくなると1〜3%程度がん化する場合があります。ピロリ菌感染を伴う場合は、除菌治療を行うと過形成性ポリープが小さくなったり、消失したりする場合があります。
過形成性ポリープと並んで臨床的に遭遇頻度が高いのは胃底腺ポリープです。過形成性ポリープとは逆にピロリ菌感染のないきれいな胃に発生することが多く、がん化することは基本的にありません。
稀に家族性大腸腺腫症(FAP)と呼ばれる遺伝性疾患のある方に、胃底腺ポリープが多発するケースがあり、一部にがん化を伴うGAPPS(gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach)と呼ばれる病態があるため、胃底腺ポリープが多発しているケースでは注意が必要です。また、この場合は大腸カメラも一度受けておいた方が良いでしょう。
酸分泌抑制薬の長期服用に伴い発生する、胃底腺ポリープと全く見た目の変わらないポリープです。一般型の異停戦ポリープと異なり、酸分泌抑制薬の内服を中止すると小さくなったり、消失したりする場合があります。
胃底腺ポリープ様ポリープと同様に、酸分泌抑制薬の長期服用に伴い発生する、白色の扁平隆起性病変です。組織学的には胃底腺と呼ばれる腺組織の過形成性変化と考えられています。酸分泌抑制薬の内服を中止すると小さくなったり、消失したりする場合があります。
大腸ポリープで最も頻度が高く、前がん病変となる「腺腫」ですが、胃にも同様に腺腫が発生する場合があります。ピロリ菌感染歴のある方の萎縮した胃粘膜に発生することがほとんどで、白色調の扁平隆起性病変として視認されます。放置するとがん化のリスクがあり、内視鏡治療の適応となります。
胃がんの肉眼形態としては陥凹型の腫瘍が最も多いですが、隆起型のポリープ様の形態を示す胃がんも存在します。胃腺腫ががん化したものなどはこのタイプに該当します。ピロリ菌感染歴のある方の萎縮した胃粘膜に発生することがほとんどで、萎縮性変化が強いほどがんの発生リスクは高いことがわかっています。
過形成性ポリープと似た見た目のポリープで、ラズベリー型胃がんとも称されます。ピロリ菌陰性であるにも関わらず、赤みのあるポリープを見つけた場合は、この腫瘍を鑑別に挙げ、精密検査を行う必要があります。
ピロリ菌陰性の胃にできる特殊型胃がんの一種です。明らかなポリープ様の形態を取らず、わずかな盛り上がりや色調変化が見られる程度のものも多く、がん専門施設などで特殊なトレーニングを積んだ内視鏡医でなければ診断は容易ではありません。ピロリ感染と関連する通常型の胃がんよりは、進行度は遅く、悪性度も低いことが多いです。
胃粘膜下腫瘍(SMT)とも呼ばれる、胃の粘膜の下にできる腫瘍の総称です。良性の病変から悪性の病変まで様々なものが含まれ、サイズや形状によっては精密検査が必要です。良性の胃上皮下病変として頻度が高いものは平滑筋腫や神経鞘腫が挙げられ、悪性のものとしてはGISTや胃神経内分泌腫瘍(胃カルチノイド)が挙げられます。
胃ポリープは、特有の症状を引き起こしません。稀に、ポリープが大きくなると出血を伴い貧血症状を起こす場合や、ポリープが胃の入り口や出口部分にできると食事がつかえるような症状が出る場合もあります。良性の場合であっても、このような症状の原因となる場合は内視鏡的切除の対象となります。
多くの方は「ポリープはとった方が良い」と考えていらっしゃいますが、これは一般的に「大腸ポリープ」の場合です。理由としては、大腸ポリープの多くは「腺腫」や「鋸歯状病変」と呼ばれる、将来的にがんのリスクとなり得る「前がん病変(=大腸がんの芽)」であるため、将来的な大腸がんを予防する目的で大腸ポリープ切除を行います。
一方で、胃のポリープの多くは将来的ながん化リスクの少ない「過形成性ポリープ」や「胃底腺ポリープ」と呼ばれるもので、これを切除することには特段のメリットがありません。また胃は血流が豊富なため、不要なポリープを切除すると出血のリスクも伴いますので、一般的に悪性を疑う要素のない胃ポリープは治療の対象となりません。
一方で大腸同様にがん化のリスクとなり得る「胃腺腫」と診断された場合や、すでにがん化している病変は当然、切除治療の対象となります。
胃ポリープの切除が必要な場合は、主に下記の方法で切除します。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、細い針を使ってポリープの下の粘膜下層に特別な液体(例:生理食塩水やグリセリン液)を注入し、病変部を膨らませてから「スネア」と呼ばれる金属の輪っかをかけて病変を絞めあげ、電気を流して胃ポリープを焼き切る方法です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、より確実に胃ポリープや早期の胃がんを切除するために行う治療法です。具体的には、粘膜下層に特殊な液体(例:生理食塩水やヒアルロン酸)を注入し、安全域を確保した上で、特殊な電気メスを使用して、病変のある部分を薄く剥ぎ取ってくるような治療法です。病変の大きさにかかわらず切除が可能な手法ですが、高度な技術を要することや、偶発症のリスクも高いため、専門施設で入院して行われることがほとんどです。
胃ポリープと食事の因果関係で明らかになっているものは特にありません。胃ポリープがあるという理由で、普段の食生活で控えなければいけない食事もありません。
ほとんどの胃ポリープは放置しても問題ありません。稀に大きくなったり症状の原因となるポリープもあり、この場合は切除治療の対象となります。
胃ポリープはストレスと関係ありません。
胃ポリープが多く出来やすい方の特徴としては、ピロリ菌感染歴のある方や、長期間に渡り胃酸分泌抑制薬を飲んでいる方、遺伝的にポリープのできやすい家系の方などが挙げられます。
典型的な見た目のポリープであれば、胃カメラ検査で病変の形や色調、表面模様を観察して診断することが可能です。悪性が疑われる場合は、一部組織を採取(生検)し、顕微鏡的に最終の診断をつけます。
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