アニサキス
アニサキス
アニサキスは、「線虫」と呼ばれる寄生虫の一種です。我々が一般的に「アニサキス」と呼んでいるものはアニサキスの幼虫のことを指していて、体長2〜3cm程度の白くて細長い形をしています。サバ、サンマ、アジ、イカ、サケ、カツオなどの魚介類の内臓周辺に寄生していますが、内臓から這い出て魚の身(筋肉部分)に寄生している場合もあり、ヒトがこれを食べるとアニサキス症を発症する原因となります。
アニサキスに寄生された魚を食べてから早ければ数時間以内、遅くとも24時間以内に、激しい腹痛や吐き気で発症します。これはアニサキスが胃に噛みついたことにより直接的に起こる症状ではなく、局所的なアレルギー反応を引き起こしたことによる症状と考えられています。
このため、症状の程度には個人差が大きく、アニサキスに噛まれていても全く無症状の人も存在しますし、軽い違和感程度で済んでしまう人もいます。胃カメラによってアニサキスを胃壁から引っこ抜くと比較的速やかに症状は改善します。腫れが残る場合には、内服薬を処方し、症状の改善を促します。私も過去に2回、イカの刺身としめ鯖で胃アニサキス症の経験がありますが、一度は激しい腹痛や吐き気に加えて高熱も出ました。
アニサキス症の約99%は「胃アニサキス症」ですが、稀にアニサキスが胃を素通りして、腸の壁に入り込む場合があり、これを「腸アニサキス症」と呼んで区別します。腸アニサキス症はアニサキスに寄生された魚を食べてから半日〜数日後と遅れて発症します。
症状は胃アニサキス症と同様に激しい腹痛や吐き気のことが多いですが、最悪の場合、小腸が腫らすことで腸閉塞を引き起こし、手術が必要になるケースもあります。
アニサキスが胃や腸の壁を破って腹腔内に侵入することを指します。アニサキスの虫体が刺入した部位に応じて様々な症状が起こり得ますが、疾患自体は非常に稀であり、その診断は難しいケースが多いです。
ご自身やご家族が釣った魚を食べた後にアニサキス症を発症して来院される患者様も多いです。アニサキスは、魚が釣れた直後は内臓に寄生している場合が多いですが、魚が死んでから時間が経つと身の部分に移動してきます。内臓をなるべく早めに処理することで、アニサキス症のリスクを減らすことができます。
アニサキス幼虫は体長2〜3cmあり、肉眼で確認することができます。実際にはくるっと丸まっていることが多いので、より小さく見えるかもしれませんが、食べる前に魚をよく確認し、見つけ次第取り除くことでアニサキス症を予防できます。
-20℃以下で24時間以上冷凍された魚は、アニサキスが死滅するため安全です。刺身などを食べる際には、一度冷凍された魚を選ぶとアニサキス症を回避できます。
アニサキスは70℃以上で加熱することによって死滅しますが60℃の低温加熱の場合は60℃で1分間以上の加熱処理を行うようにしてください。魚の身の奥にアニサキスが潜んでいる場合もありますので、中までしっかり熱を入れることが重要です。
お酢でしめてもアニサキスは死にませんので、しめ鯖などは注意が必要です。実際に私もしめ鯖で胃アニサキス症となり、大変つらい経験をしたことがあります。
アニサキス症は、主に局所的なアレルギー反応によって引き起こされます。一方で、アニサキスアレルギーはアニサキスをアレルゲンとする全身性のアレルギー反応であり、一般的な食物アレルギーと同様に、蕁麻疹症状や、重症の場合は呼吸困難感や血圧低下などを伴うアナフィラキシー症状を引き起こすことがあります。アニサキスアレルギーは命に関わる状態にもなり得るため、特に注意が必要です。
胃アニサキス症は、食後数時間以内、遅くとも24時間以内に発症します。腸アニサキス症は、食後半日〜数日後に少し遅れて発症する場合が多いです。
アニサキスに寄生された魚介類を食べても、必ずしも症状が出るわけではありません。アニサキス虫体が胃や腸の壁に噛みつかれないまま自然に排泄してしまう場合もありますし、噛みつかれた場合でもアレルギー反応を起こさず無症状の方もいます。
アニサキス症がヒトからヒトへ感染することはありません。またアニサキスがヒトの中で寄生して成長することもありません。
日本で最も多く見られるアニサキスの種類(アニサキス・シンプレックス)の幼虫はブラックライトを用いるとよく見えるようになりますが、白色光の下でも肉眼で観察することが可能です。ただし、アニサキスの種類によってはブラックライトで光らないタイプのアニサキスもいるので注意が必要です。
すべての魚に必ずアニサキスが寄生しているわけではありません。主にオキアミを餌とする魚の体内に寄生し、サバ、サンマ、アジ、イカ、サケ、カツオなどの魚介類に特に多くみられます。
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