大腸内視鏡の下剤について
大腸内視鏡の下剤について
大腸内視鏡検査前には、約2リットルもの大量の下剤(腸管洗浄剤)を内服する必要があります。この理由は、大腸の中をどれだけきれいにできるかが、検査の質を直接的に左右するからです。大腸の中の評価する尺度には、一般的に下記のアロンチックスケール(Aronchick Scale)を用い、スケール④〜⑤を検査が可能な状態としています。
大腸内視鏡の検査の質は大腸腫瘍発見率が指標となります。腫瘍発見率が高い検査=見逃しの少ない検査、ということですので、将来的な大腸がんの予防効果が高いと言えます。研究論文によると、スケール④〜⑤の状態で行われた検査は、スケール①〜③の状態で行われた検査と比較して、腫瘍発見率は約2倍になることが示されています。特に、鋸歯状(きょしじょう)病変と呼ばれる特定のタイプのポリープに限ると、スケール④と⑤との間にも腫瘍発見率に約1.7倍の開きがあることが報告されています。
腫瘍発見率に大きく左右するのは「検査医の技量」と「検査を受ける側(患者様)がどれだけ大腸をきれいにできるか?」の2つです。検査医の技量については、質の高い医療を提供するクリニック選びが重要です。医師が多数在籍している施設では、検査医間で技量のばらつきがありますが、当院では院長が全ての検査を直接対応しており、一貫して質の高い大腸カメラを提供しています。
一方で、大腸をきれいにする部分(下剤を頑張って飲む作業)だけは、どうしても患者様ご自身の協力が必要です。ご自身がより高い質の検査を受けるため、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いします。
初めて検査を受ける方のほとんどが、検査を受ける前は「約2リットルもの大量の下剤は到底飲めない」と感じられますが、実際検査を受けた後の感想はかなりのバラツキがあります。私が診察している感覚としては、約60%の方は「思ったよりつらくなかった。問題なく飲めた」と感じ、約30%の方は「美味しくはないが、飲めなくはない」と表現します。
このように全体の約90%の方は、検査を受けるにあたって問題なく下剤を服用できています。下剤は身体に吸収されずにそのまま排出されるため、同量の水を飲む場合と比べて満腹感は感じにくく、実際に私自身や私の妻も、特に苦痛なく下剤は飲めます。一方で、残りの10%の方は、味や量の問題で「下剤がつらい」と感じる場合があります。
周囲にたまたまこのような方がいて、「下剤がつらかった」などと聞き、必要以上に「下剤がつらい」というイメージが定着しているケースもよくあります。とはいえ、実際に「下剤がつらい」と感じる方もいるのは間違いないので、当院では下剤による苦痛を少しでも緩和するためにさまざまな工夫をしています。
下剤の味や量の他に、初めての検査の時に多くの方が不安に感じるのが、「家からクリニックに向かう途中にトイレに行きたくなったら?」ということです。実際は、お腹が空っぽになって落ち着くまでの時間を見越して飲み初めの時間を設定するので、移動に支障が出ることはほとんどありません。とはいえ、私自身も初めて検査を受けた際には、移動中のことを不安に感じた記憶があります。
そんな不安を解消するため、当院ではクリニック内で快適に事前準備を進めていただけるカフェのような半個室の院内下剤スペースをご用意しました。またご希望の方にはトイレ付き個室のご案内も可能です(別途料金)。患者様が心身ともに安心して検査に臨めるよう、環境作りに努めています。
下剤の種類を変えてみても、どうしても下剤が飲めない!という方のために、当院では「内視鏡的下剤注入法」と「鼻チューブ法」の2種類の下剤を飲まない大腸内視鏡の方法をご用意しています。
当院で採用している下剤は下記の4種類です。それぞれに味や洗浄力が異なり、ご自身に合うものを探していただく方法もあります。
サルプレップ | モビプレップ | マグコロールP | ニフレック | |
---|---|---|---|---|
飲む量 | ◎ 480〜960㎖ | ○ 1000〜2000㎖ | △ 1800㎖ | △ 2000㎖ |
味 | △ 苦味あり | ○ 梅風味 | ◎ スポーツドリンク | ○ 薄い塩レモン味 |
洗浄力 | ◎ 最も強い | ◎ 強い | ○ 標準 | ○ 標準 |
この他に、錠剤タイプの「ビジクリア」と、最も飲む量が少ない「ピコプレップ」がありますが、「ビジクリア」は錠剤を50錠も飲まなければいけない上に、重篤な腎障害などの報告例も多く、当院では採用していません。また、「ピコプレップ」は飲む量が少ない分、洗浄力も落ちるため、十分に検査の質が担保できず、病気の見落としにつながる懸念がありますので、当院では採用していません。
サルプレップはペットボトル入りの製剤をそのまま飲むことで大腸をきれいにするお薬です。
サルプレップは洗浄力が非常に強く、飲む量が480〜960㎖と最も少なくて済みます。
他の下剤と異なり、粉を溶かす必要がなく、準備が簡単です。
人によっては味に苦味を感じ、飲みにくいと感じる場合があります。
下剤の濃度が高いため、脱水になりやすいです。脱水予防のため、下剤の倍量の水かお茶を飲む必要があります。
モビプレップはお薬を水で溶かして飲むことで大腸をきれいにするお薬です
洗浄力が非常に強く、比較的少ない量で大腸がきれいになることと、味の面でも比較的受け入れやすく、バランスのよい下剤です。
粉末を水に溶かす必要があるため、少し準備に手間がかかります。
下剤と水を交互に飲む必要があり、服用方法が難しいと感じる場合があります。
マグコロールPはお薬を水で溶かして飲むことで大腸をきれいにするお薬です。
スポーツ飲料に似た味わいで、飲みやすいと感じる方が多いです。特に、冷蔵庫で前日から冷やしておくことで、さらに飲みやすくなります。
粉を水に溶かしたものを飲むだけで、服用方法が非常にシンプルです。
1,800㎖と、服用量はやや多めで、味が合わない場合は全量を飲み切るのがつらいと感じることがあるかもしれません。
ニフレックはお薬を水で溶かして飲むことで大腸をきれいにするお薬です。
腎臓や心臓に負担をかけないため、持病がある方やご高齢の方でも安心して服用いただけます。
2,000㎖(場合によっては最大4,000㎖まで)飲む必要があるため、量が多く感じられることがあります。
特有の味があり、人によっては飲みにくいと感じられる場合があります。
通常、1日1回快便の方であれば、標準的な下剤による前処置で大腸がきれいにならないことはほとんどありません。しかし、便秘症(毎日排便がない、もしくは出ても少量で硬いなど)の方では、大腸がきれいになるまで極端に時間を要する場合があります。
このような方は、検査の1週間〜3日程度前から刺激性下剤の併用や、食事制限期間を長めにすることで、大腸がスムーズにきれいになるように準備を進める必要があります。また、洗浄力の強い下剤を前日から飲み始める方法も有効です。過去に下剤の効果が不十分だった方や、周りの人よりも前処置に長く時間がかかってしまった方などは、事前にご相談ください。
量が多くて飲みきれない、と感じる方は、洗浄力の強くて服用量が少なくて済むタイプの下剤に切り替えることをおすすめします。それでも難しい方は、下剤を飲まなくていい大腸内視鏡検査をご案内しますので一度ご相談ください。
検査前には大腸の中をきれいにすることは必須です。検査の日時変更が必要になりますのでクリニックまでご連絡ください。
下剤を飲み切ってから、便がきれいになるまでは少し時間差があります。水やお茶を多めに飲んで排便を促したり、歩いたりお腹をさすったりして、腸を刺激してあげることも有効です。それでもきれいにならない場合は、下剤の追加内服が必要な場合がありますので、一度クリニックまでご連絡ください。
飲んでいる途中で吐き気や腹痛、アレルギー症状などがみられた場合には、一度内服を中断し、クリニックまでご連絡ください。
ご自宅の慣れた環境で落ち着いてトイレに通っていただいて、検査時間に合わせてご来院いただくことももちろん可能です。在宅ワークなどをしながら、トイレに通うことも可能です。
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